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レポート:イスラーム思想と現象学

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「現象学の異境的展開」は、ドイツ・フランスを震源地とする現象学が世界各地に伝播することで生じる新たな出会いや葛藤について、積極的に研究を行ってきた。その一環として、イランにおけるハイデガー思想の影響について詳しいビジャン・アブドルカリミー氏とバフマン・ザキプール氏を招聘し、2日間の講演会を行うに至った。アブドルカリミー氏はこのテーマについてイランにおいてプロジェクトを組織し、すでにその成果をペルシャ語で発表されている。1日目は20名前後、2日目は10名強の参加者を得ることができた。
アブドルカリミー氏には、21日に「Heidegger and the revival of the Eastern Meditative Thought」(当初のタイトルから変更)、22日には「Heidegger in Iran」と題する発表を行っていただいた。アブドルカリミー氏は、両日にわたって、西洋の近代化、物質化された世界においてニヒリズムに陥ることのないように、東洋の思想伝統、宗教的・瞑想的伝統に立ち返る必要があること、そしてその伝統を普遍的なものへと開くためにハイデガーの哲学が極めて有効であることを力説された。1日目は小野純一氏による通訳をとおして主として原理的な内容を、2日目は通訳なしでより具体的な事例を含めてお話しいただいた。たとえば、2日目には、ハイデガーの翻訳者であると同時にイスラーム思想研究者でもあるアンリ・コルバンや、イスラーム思想家のファルディドなどの評価についても語られた。

(1日目 左から、ザキプール氏、小野氏、アブドルカリミー氏)

ザキプール氏には、21日に「井筒俊彦の哲学における反対のオリエンタリズム―井筒の東洋哲学の政治的な本質について」と題する講演を行っていただいた。井筒俊彦の業績を的確に要約しつつ、比較哲学という学問領域の中にその業績を位置づけるとともに、その可能性を批判的に展開しようとされた意欲的な御発表であった。

(2日目)

2日間の講演を通して、あらためて非西洋世界における思想伝統と哲学との関係について、考え直す機会を与えられた。また、イランの研究者とのつながりを構築できたことは、今後の研究の展開のためにも非常に有意義であったと言える。
なお、2日目は記録的な大雪であったが、無事開催することができたことを付け加えておく。

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